物には魂が宿る。
わたしたちにとって、ごく身近な文具の ひとつである、消しゴムの身になって考 えてみる。 人間と言う生き物は非常に身勝手な生き物。 紙に書いた言葉や絵が自分の気にそぐわな いと、普段は気にもとめていない消しゴム を徐に取り出して、それを紙に荒々しく擦 り付け始める。
人間にしてみれば、自分の間違いを消しゴ ムひとつで帳消しにできるのだから、さぞ かし満足だろうが、その間、消しゴムは体 の一部を削り取られているのだ。しかも、 人間は用が済むや否や消しゴムをポンと投 げ飛ばして、それっきり知らん顔。消しゴ ムの気持ちなど、これっぽちも考えていな い。
物には魂が宿る。
ファーストフード店や喫茶店などで、ドリ ンク類を注文すると、必ずと言っていいほ ど、付いてくるストロー。あのストローに もストローなりの悲しみがあるらしい。 それは、ストロー自身で吸われる人を選べ ないということである。吸う人が可愛い女 の子だったら、ストローもまんざらでもな いだろう。
口の臭いおっさんや四六時中よだれを垂ら しているようなゲーム脳少年にも当然のよ うに吸われるのである。しかも中にはスト ローを噛むという暴挙に出る輩もいる。噛 まれた瞬間のストローの気持ちは想像する に難くない。このようにストローは毎日、 風俗嬢さながらに世のため人のために体を 張って頑張っているのである。
物には魂が宿る。
世の中の喫煙者の皆様へ。あなたは普段、 このような言葉を不用意に発言してはい ないだろうか。 「たかが百円ライターだから、なくして も屁でもねえよ。」 あなたは何かを勘違いしていないだろう か?せいぜい百円ライターぐらいしか買 えないような低所得者のあなたが百円ラ イターにどれだけお世話になっているこ とか。
確かに百円ライターは内気な性格なので、 あなたがどんなにひどいことを言っても笑 って許してくれるかもしれない。しかし、 百円ライターのその優しさにつけこんで、 畳み掛けるように百円ライターの尊厳を傷 つけるようなことを言うとは!そんなこと を平気で言うあなたは百円以下の価値しか ない人間だ。日頃から百円ライターに感謝 することを心がけよう。
物には魂が宿る。
ジーンズを買うときなどにごく普通に行 われる、裾上げ。人間からしてみれば、 自分に合ったサイズにできるので非常に ありがたいサービスだが、その影にはジ ーンズ一家の悲劇的な一家離散があるこ とはあまり知られていない。ジーンズの 裾を上げたとき、切り取った部分のジー ンズはいったいどこに行ってしまうのか。
ジーンズ・ショップに陳列されていたとき は家族仲良く暮らしていたジーンズ一家が 、客に売り飛ばされ、裾上げされた途端、 家族の絆を切断され、離れ離れになってし まうのだ。人間の身勝手な行為によって、 家族の絆を分断されてしまう悲劇。これは 旧東西ドイツ、南北朝鮮の分断の悲劇と非 常によく似ている。
物には魂が宿る。
カツラにしてみれば、ただ純粋にハゲて いる人を助けたい、勇気づけたいという 一心なのかもしれない。しかし、世間の カツラの評価は氷のように冷たく、やれ 「隠蔽工作」だの、「帽子」だのと陰口 を叩かれる。カツラの名誉のために言っ ておくがカツラ自身は全くハゲていない。
カツラにはふさふさとした毛があるのであ る。誰だって、ハゲとはできるだけ関わり たくないと思っている。にもかかわらず、 カツラは「自分の身を投げ打ってまでハゲ と関わり、ハゲを助けようとしている。そ んなカツラの「男らしさ」にエールを送り たい。
物には魂が宿る。
煙草には悪いが、煙草がいったい何をし たいのか全くわからない。喫煙者によっ て先っぽを火であぶられた上に、煙にな って儚くも消えてなくなってしまうのだ から。しかし、この一見、無計画で破滅 的な煙草の人生観が多くの人たちの共感 を得ているのも事実である。
日本の喫煙人口は3000万人をはるかに超え ると言われていることからもわかるように 多くの人たちに煙草の人生観は支持されて いる。たった一度の人生。煙草のように儚く、 一瞬にして駆け抜けてしまうような人生も いいのかもしれない。60、70年代のロック・ ミュージシャンたちがそうであったように。
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